救急救命士の仰天現場 パラメディック119~すべては救命のために~

パラメディック119~すべては救命のために~
救急救命士のため息報告 case33

パラメディック119ため息現場捨てられて6万8千円也 up data 2007.6.26

捨てられて6万8千円也

 歓楽街を抱える救急隊を悩ませる救急活動、なんと言っても酔っ払いです。何が一番辛いって酔っ払いは深夜に救急車を呼ぶこと、そしてまた酔っているから暴言、暴力などなどトラブルが多いこと。根本的問題を言えば、ついさっきまで仲間たちと大酒を飲むほど元気な方である訳です。元気な人は救急車なんて呼んじゃダメ…。大人だから飲むことのできるお酒、だからこそ大人として節度を持って自分に合った適量をわきまえ、自分の足で自宅に帰る。こんな当たり前をみんながしてくれれば良いのですが。…なんて私も救急車の世話にはなったことありませんがお酒にまつわる失敗は何度もありますけどね。

 「救急出場、○ビル4階、飲食店でパブスナック○の前、男性は倒れているもの、通報はパブスナック○従業員のSさん」との指令に私たち救急隊は出場しました。深夜も深夜の出場、現場は歓楽街、スナックの前で倒れていると聞けば酔っ払い、酩酊者である可能性は非常に高いです。現場は私たち救急隊の受け持ち区域で5分ほどで到着しました。

 現場到着
現場は歓楽街のど真ん中、もう終電も終わっている深夜だと言うのに人で溢れています。そのほとんどが酔っ払い、「終電も終わっちゃったし朝まで飲もう」そんな人たちで溢れています。現場の○ビル前に停車、資機材を傾向して4階に上がりました。

 傷病者接触
 現場は雑居ビルたいして大きくもないビルなのに、この階だけでも数店舗が入っています。指令先のパブスナック○の目の前に40歳くらいの男性が倒れていました。通報者のSさんがエレベーターの目の前で待っていました。いかにも夜のお仕事をされているようなオールバックの髪型、黒いスーツでばっちりきまっている方でした。
救急隊長「こんばんは、救急隊です。あなたが通報して下さったSさんですか?」
通報者S「はい、店の目の前でこんなんなっちゃって困ってるんだよね」
救急隊長は通報者のSさんから情報を取り、救急隊員は傷病者の観察、機関員は搬送の準備に取り掛かります。倒れていると言っても正確には酔っ払って寝ている。これが最もしっくり来る表現です。歓楽街を持つ救急隊をしていればパっと見て分かります。
救急隊員「こんばんは、もしも~し!どうされましたか?」
傷病者「う~ん、う~ん…」
ものすごいアルコール臭…酔っ払いです。
救急隊長「Sさん、この方いつくらいから倒れているんですか?」
通報者S「20分くらい前からですよ」
救急隊員「Sさん、こちらの方、大分お酒を飲まれているみたいですよ、病気とかでここに倒れているのではなくて酔っ払っちゃってここで寝込んでいるようですが」
通報者S「そうですか、病気じゃないんじゃよかった」
救急隊長「Sさん、この方そちらのお店で飲まれていた方ですか?どのくらい飲まれたのか知りたいのですが」
通報者S「…。さあ?うちで飲んでいた人じゃありませんよ」
救急隊長「そうですか」
通報者S「とにかく店の目の前でこんな風になられちゃ困るんだよね」
救急隊長「そうですよね」
救急隊員「ねえ、ご主人さん、起きようよ!こんなところで寝ちゃダメだって!ねえ!」
傷病者「う~ん…」
救急機関員「ねえ、旦那さん、病院行こう!ね、ほら大丈夫?」
傷病者?「う~ん、う~ん…」
とにかくすごいアルコール臭…どれだけ飲んだのでしょうか??
救急隊長「Sさん、通報ありがとうございました」
通報者S「いいえ、お願いします」

 車内収容
車内で数回の嘔吐、出てくるのは酒、酒、酒、胃液…。救急車内の換気扇を回しても回してもすごい臭いです。これだけ吐いて少しは楽になったのか傷病者の男性は眠りに入ろうとします。
救急隊長「ちょっと、起きてください!ねえ、旦那さん、名前教えてよ!ちょっと寝ないで!ねえ、起きて~!」
名前も生年月日も分からない。もちろん現病、既往も何も分からない。当然、搬送先病院もなかなか決まらない。名前も生年月日も分からない酔っ払いを診てくれる病院なんてなかなか見つかりません。探しに探して頼み込んで搬送先病院をどうにか決めることができました。診察の条件は診察して異常がなければ救急隊から警察官に保護依頼すること。警察官に保護してもらうまで救急隊が面倒をみることでした。

 病院到着
病院に到着するころには傷病者も大分吐いて楽になってきたのか受け答えができるようになってきました。
看護師「こんばんは、ここは病院ですよ、分かりますか?」
傷病者「ほぉえ?」
看護師「あなたのお名前を教えてもらえますか?」
傷病者「#$%&・・・%&」
看護師「え?分からないわ?」
傷病者「ほわぁ%&#%」
看護師「お財布の中身見せてもらってもいいかしら?免許証とか入っていますよね」
傷病者「うんうん、%#$&%」
うなずいている傷病者、本人の同意が得られました。本人の目の前でお財布の中身を見せてもらう。免許証などで名前、生年月日が分かった。さらに出てきたのはレシート…。
救急隊長「ああやっぱりね…」
救急隊員「やっぱりでしたね~ったく…」
傷病者の男性はただの酔っ払いとの診断、パトカーで迎えに来た警察官に連れられ保護してもらうこととなりました。

 帰署途上
救急隊員「やっぱり出てきましたよ」
救急機関員「出てきた?だろうな~」
救急隊長「いくらだったと思う?」
救急機関員「5万円くらい?」
救急隊員「もっとです6万8千円!」
救急機関員「6万8千円、バッカだよなぁ~」
救急隊員「本当ですね」
救急機関員「…6万8千円、本当バカだよなぁ~」
救急隊員「本当バカですよね~」
出てきたのはパブスナック○のレシート6万8千円也、やっぱりあのパブスナックで散々飲んで店の前で寝込んでしまった酔っ払いでした。通報者のSさんはやっぱり厄介払いをしたくて救急要請したのでした。6万8千円も使ったお客さんなんだから「知らない」ってことはないでしょ…。店の前で寝込んだと言うのも定かではありません。6万8千円分も飲み明かした訳です。お店で寝込んでしまい「さあもう帰って」と帰されたのかも…。店の前に捨てられて6万8千円也か…。本当バッカだよなぁ…。

 この記事へのご意見・ご感想、追加、修正などなどをお寄せください。パラメディック119ブログ版・救急救命士の待機室にコメントを残すことができます。

最近の記事
コーナー

ソーシャルブックマーク
パラメディック119ため息現場捨てられて6万8千円也